離婚で不動産を財産分与するとき、誰に相談する?行政書士・司法書士・税理士の役割を解説

離婚の財産分与で、自宅やマンションなどの不動産がある場合、

「夫名義の家を妻名義に変更したい」
「住宅ローンが残っているけれど、妻が住み続けたい」
「家を売却せず、一方が取得することになった」

といった話になることがあります。

このとき意外と分かりにくいのが、どの専門家に何を依頼すればよいのかという点です。

行政書士、司法書士、税理士など、いわゆる「士業」にはそれぞれ専門分野があります。

不動産を含む財産分与では、一人の専門家だけですべての手続きを完結できるとは限りません。

たとえば、夫婦で話し合った結果、

「現在、夫名義になっている自宅を、離婚に伴う財産分与として妻が取得する」

と合意したとします。

まず必要になるのが、夫婦で合意した内容を明確にすることです。

行政書士は、当事者間で話し合いがまとまっている場合、その合意内容をもとに離婚協議書などの「権利義務に関する書類」を作成することができます。日本行政書士会連合会も、協議書や各種契約書などを行政書士が作成できる書類として案内しています。

ただし、離婚協議書に「妻が不動産を取得する」と書いたからといって、法務局に登録されている所有者名義まで自動的に変更されるわけではありません。

不動産の所有者を夫から妻へ変更するには、所有権移転登記という手続きが必要になります。

この不動産登記の申請代理や、法務局へ提出する登記関係書類の作成は、司法書士の専門分野です。

そのため、

「財産分与としてこの不動産は妻が取得する」

という合意内容を離婚協議書や公正証書にまとめる部分と、

「その合意に基づいて不動産の名義を変更する」

という登記手続きは、分けて考える必要があります。

不動産がある離婚では、書面を作った後にどのような登記が必要になるのかまで見据えて進めることが大切です。

離婚に伴う財産分与では、財産を受け取ったからといって、原則として贈与税がかかるわけではありません。

財産分与は、婚姻中に夫婦で協力して築いた財産を清算するという性質があるためです。

ただし、夫婦の財産状況などから見て分与された財産が多すぎる場合など、例外的に贈与税が課されることがあります。

また、不動産を財産分与する場合には注意が必要です。不動産を渡す側に譲渡所得税が生じる可能性があるほか、受け取る側にも不動産取得税や登記の際の登録免許税などが関係することがあります。

そのため、「財産分与だから税金は一切かからない」と考えるのではなく、不動産を含む場合には税金についても事前に確認しておくことが大切です。

個別具体的な税務判断や税額については税理士の専門分野となるため、必要に応じて税理士へ相談することになります。

不動産の財産分与で特に複雑になりやすいのが、住宅ローンが残っているケースです。

たとえば、

・自宅は妻が取得する

・現在の住宅ローンは夫名義

・離婚後は妻が住宅ローンを支払いたい

という希望があったとしても、夫婦だけで「ローンの名義も妻に変更する」と決めれば変更できるわけではありません。

住宅ローンの借換えや債務者の変更については、金融機関の審査や承諾が必要になります。

そのため、離婚協議書を作成する前後で、現在借り入れている金融機関や借換えを検討している金融機関へ確認しておくことも重要です。

行政書士は、当事者間ですでに決まっている住宅ローンの支払方法や、不動産の取り扱いなどについて、離婚協議書として整理することができます。

ただし、金融機関の審査結果を保証したり、金融機関に代わってローンの変更を決定したりすることはできません。

離婚時に不動産がある場合、それぞれの専門分野を整理すると、

・離婚協議書など、夫婦で合意した内容の書面化……行政書士

・不動産の所有権移転登記……司法書士

・財産分与に伴う個別具体的な税務相談……税理士

というように、必要に応じて専門家を分けて考えることになります。行政書士についても、他の法律によって制限されている業務は行えないことが明示されています。

また、そもそも財産分与の内容について夫婦間で争いがあり、相手方との交渉や法的判断が必要になっている場合には、弁護士への相談を検討する場面もあります。

不動産の財産分与は、「家は妻がもらう」と一言決めれば終わるものではありません。

所有権をいつ移転するのか、住宅ローンをどうするのか、売却する可能性はあるのかなど、離婚後に必要になる手続きまで考えて内容を整理しておくことが大切です。

そして、夫婦で話し合って決めた内容については、口約束だけではなく、離婚協議書や公正証書などの書面に残しておくことをおすすめします。

「これは行政書士に聞くことなのか、司法書士なのか分からない」ということもあると思います。

そのような場合でも、最初からご自身ですべての専門分野を判断する必要はありません。必要な手続きを整理しながら、内容に応じて適切な専門家につないでいくことが大切です。